東京の皇居東側、竹橋にある国立近代美術館の所蔵作品展です。風景画や人物画、東洋画や西洋画など様々な作品を見たいと思い訪れました。
同館が所蔵するハイライト作品がはじめに展示されています。この絵は色使いと構図が見事で、髪の筆致の細やかさがリアリティを増します。彼女たちは何を見ているかと想像します。背景の木はこぶしでしょうか、もくれんでしょうか。構図のバランス、筆使いの細やかさと程よい明度の色合いが織りなす美しさ、絵全体が醸す明るい雰囲気を感じる作品です。人物と背景の木花の構図は一見自然ですが、現実には後ろの花がこのように大きく見えることはないと思います。西洋で開発された遠近法とは異なる日本画だからこそ表現できる絵画だと思います。
これは1890年(明治23年)の作品で、日本が西洋の技法を取り入れ始めた最初の時期の作品とのことです。当時の人々には、技法による表現の生々しさからか「サーカスの綱渡り」のようで不評だった、と説明に書かれています。このような神々しい絵にも関わらず、サーカスに見立ててしまう当時の人々の表現力の豊かさに思わずクスッと笑ってします。
この展示絵画の中で印象に残った1枚です。目に映る白樺の木と澄んだ水池、雪が残る山々、山の表面にわずかにみえる山肌。上高地を描いた風景とのことですが、この水面の美しさを眺めていると、しばし時間を忘れてしまいます。
これは空想の世界ではなく、作者が実際に見た播磨の海の風景とのことです。凪いだ海と澄んだ空の一体感に浸ります。少し見ていると水平や陸地の存在に気づき、さらに眺めていると、そこに存在する自分に気づきます。
川合玉堂の代表作で重要文化財となっている「行く春」です。長瀞の風景とのことですが、日本の河川の上流はこのような景観が多いと思います。日本の春と桜の美しさを、渓流を舞台として描いてくれた絵画なのだと感じます。
川合玉堂の生年は1873年-1957年。先日観覧したモネは1840年-1926年でした。彼らが描くそれらの絵には季節が明確に題材として織り込まれており、その風景の中に入り込むことができます。
様々な絵との対話を通じて、色々な世界に触れさせてもらいました。