人新世の「資本論」 斎藤幸平著のレビューです。
今後の経済成長のあるべき姿として脱成長という考え方を述べた書です。マルクスが目指していたところを著者の視点で分析し述べていますが、論理の展開は筋が通っており、現在の資本主義社会の問題点と、このまま進んだ時の顛末だけでなく、今後我々が進むべき方向も示しています。
いまの資本主義は、貧困国と自然から富を搾取をしていると論じています。貧富の差はますます広がり、過剰なエネルギーの消費により温暖化を加速させるが、その当人たちはそのつけを払わず死んで行き、またそれを引き継いだ富裕層は自分たちだけが生き残れる環境を作っていく。この負の連鎖を止めるには、今のペースの成長はやめるべき、つまり脱成長を目指すべきと述べています。確かに自分の身の回りには物が溢れています。自分も反省しなくてはならないと感じました。
先端の取り組みの例としてバルセロナを取り上げ、脱成長を掲げ市民が一丸となっているといいます。私たちも自分にもこれから何かできることがあるのではないかと考えてしまいます。
貧困国の人々や地球環境の犠牲によって自分の生活が成り立っているとすれば、やはり考えを変えなくてはならないと思います。身近にいない貧困国の人々や、目に見えないところで行われている地球環境の破壊や搾取を自分ごととして考えること、つまり人や自然を尊重し、いたわる態度や実践がこれからの自分や社会に求められるものであろうと思います。
2021-11-23 掲載