現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一 守屋淳訳 ちくま新書

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現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一

NHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公渋沢栄一が著した「論語と算盤」の現代語訳です。書店では、原書とどちらにしようか迷いましたが、概要を短時間でつかむことを優先して、翻訳版を買いました。「論語」は以前に読んだことがあるので、渋沢栄一の論語に対する解釈がどのようなものであるか期待していました。

渋沢栄一なりに解釈した論語の内容をわかりやすく伝えています。お金儲けをするということと人の役に立つということとは両立するものである、と言う考えのもとに渋沢栄一は本書を進めています。また、孔子も金儲けをすることについては否定をしていないと解説しています。その通りだと思いますし、私も「論語」をそのように理解していました。

最も印象に残ったのは、物事に取り組む際に大切なのは、知恵、情愛、意志であるという心構えです。自分の仕事に対して、知識や情熱は持っていますが、仕事を通して世の中をどうしたいのかという意思をもっと強く持たなければならないと感じました。 

また、本書では次の主旨のことが述べられています。

自分を磨く事は大事なことである。この時に気をつけなければならないのは「現実と学問との調和」である。理論と現実と言うものは、互いに一緒になって成長していかなくてはならず、自分を磨く際には、理論ばかり先行してはいけない。そして、何事も中庸が大事である。

頭でっかちではいけないし、知識もなくやみ雲にことをなすのも危険です。理論と実践は共に必要なものであるものの、両者バランスこそが大事であるといことです。自分の日頃の生活においてもっと意識せねばと感じました。

そして、貧富の差をなくそうというものがいるが、人それぞれ能力が違うのだから貧富の差をなくす事は無理なのである。それより、資本家と労働者、富むもの富まざるものが持つべきは、お互いに対する思いやりの心であり、「思いやりの道」で双方が向き合えば法律といったものは必要ないとも述べています。このことは本来貧富の差だけではなく、男女差など本来あらゆることに対して、この姿勢が大事なのではないかと思います。

偉業を成し遂げた渋沢栄一ですが、晩年の言葉「婦人関係以外は、一生を省みて俯仰天地に恥じない」には驚きました。こんなことを言ってのけてしまうのですから。さすがです。

現代語であったため、とても読みやすく半日程度で読み終えることができました。全文翻訳ではないですが、渋沢栄一の思想を理解する上では十分だと思いますので、迷う場合は、現代語訳版の方がいいかもしれません。

本書の最後に渋沢栄一小伝が記されていますが、今のところ、NHK大河ドラマの「青天を衝け」は、ここで記述されているストーリーそのものに見えます。

本書はビジネス人が読むべき本です。

 

2021年5月27日 掲載

 

 

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