人の性はなぜ奇妙に進化したのか ジャレド・ダイアモンド

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人の性はなぜ奇妙に進化したのか

ジャレド・ダイアモンド氏の「銃・病原菌・鉄」に続き、「人の性はなぜ奇妙に進化したのか」を読んでみました。「銃・病原菌・鉄」では、外的要因によって人類が誘導されてしまう道というものを理解できました。一方で本書は人類が本能、つまり内的要因によって進まざるを得ない道筋を考察するための書だと言えます。

人類には様々な外的要因が課せられてきました。そのなかにあって多くの選択肢があったにもかかわらず、何を基準に今の自分たちに至る選択をしてきたのか、いまの我々があるのはなぜか、そして何より、今後人類は何を選んでいくのか、それをわかった上で自分は何をすべきか、できないことはできないし、できることはできる、そういう判断の理由や、今後の拠り所がよく理解できる書です。

人類の置かれた環境、人類が備えた知恵、置かれた環境において、子孫を残すために自分に対しての最善を成してきたこととその理論がわかりやすく書いてあります。一番衝撃的だったのは、自分にとっての最適な行動の選択というのは、「男」と「女」で異なるということでした。「人類」の子孫を残すなどという崇高なものでなく、「男」という自分、「女」という自分が、いかに自分の子孫をいかに残せるか、そのための最善策は何か、そしてその最善策を講じる肉体構造と行動知見を得られた「男」と「女」だけが「人類」として生き残れるというということでした。生き残る本能が働き、生き残るための行動を人類がとると思っていたのですが、そんなきれいなものではありません。「男」も「女」も自分の子孫をいかに残すか重要であり、しかも、「男」と「女」とでその戦略が全く異なるのです。同じ思いを共有してなんてことは決してないのです。また、男同士も女同士も敵です。人類という全体における最適戦略などという崇高なものではなく、いかに自分が自分の子孫を残せるか、そのための最適な行動をとってきたことがよくわかりました。

そして行動を選択するにあたって重要な点があります。それは、「男」であろうと「女」であろうと相手の利益は関係ないということです。自分の子孫を残すため(自分の利益のため)なら、相手と協力するし、そうでなければ敵対します。加えて興味深いのは、その戦略が男女で全く異なるという点です。言われてみれば当たり前のことかもしれません。しかし、私は人類という共同体を中心に描いていたので、本書の展開と理論はとんでもない論理でした。そのようなわけで、今は混乱していますが、よくよく整理して、世界が向かうであろう方向、自分が取るべき行動を考えていきたいと思います。

なお、本書は「セックスはなぜ楽しいか」と原書は同じですので、読むのであれば後から出版されたこちらがいいでしょう。

人間の性はなぜ奇妙に進化したのか

人間の性はなぜ奇妙に進化したのか

 

 2021-03-25 掲載

 

 

 

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