東京国立近代美術館で開催の、明治から昭和まで生きた日本画家鏑木清方の展覧会です。
描かれる美人画は、女性だけでなくその背景までも精密に描写されています。とても柔らかな雰囲気を持つ絵です。特に「社頭春宵」は春の夜を丁寧に描き幻想的です。たけくらべを題材にした「たけくらべの美登利」が手にする水仙を見つめる美登利の表情と視線の物憂げな様子も印象的でした。
掛け軸などに描かれた日本画というと背景は最小限の絵が多いですが、清方の絵は背景がよく描かれており、その時の時代をとてもよく想像することができ、自分がその世界に入ってしまう気がします。
清方の絵を見ながら年配の人が「こういう時代だったんだな」と言っていましたが、その方も当時の様子を心に思い描いていたのかもしれません。上村松園とはまた異なる世界を堪能させていただきました。
2202-04-29 掲載