高音質で遮音性能に優れたエティモティックリサーチ社のイヤホンER4XRをレビューし紹介します。同シリーズの代表格であるER4SR、ノイズキャンセル性能に優れ高音質なAppleのAirPods Proを含めて、3機種を実際に使用した感想に基づき違いも比較します。
目次はこちら。
- はじめに
- ER4シリーズの特徴
- 若い人にもおすすめ
- 優れた遮音性能
- AirPods Proとの外部音に対する遮音性能の違い
- ワイヤレス対応したER4XR-BT、Etymotion BT
- ER4XRとの出会い
- まとめ
はじめに
仕事や作業に集中したい時、音楽をBGMとして聴くことはありませんか。
周囲の音を遮断して、自分だけの世界に没頭すると仕事もはかどるのではないかと思います。そのような時には軽くて携帯性に優れたイヤホンで音楽を聴くのが便利です。
外部音をシャットアウトするイヤホンには遮音性に優れたイヤホンと、ノイズキャンセル機能付きのイヤホンの2種類があります。私はそのどちらかのイヤホンを使ってきましたが、最終的にはエティモティックリサーチ(Etymotic Research)社のER4XRに行き着きました。ER4XRは遮音性能に優れ、さらに音質も抜群なイヤホンです。しかし、当初はER4SRを使っていました。また、そうはいってもノイズキャンセル性能に優れたAppleのAirPods Proも使い勝手がいいので使っています。ここでは、ER4SRを経てER4XRに行き着いたいきさつと、それらとAirPods Proとの違いを比較をしながら紹介します。
では、まずER4シリーズの特徴をレビューします。
ER4シリーズの特徴
エティモティックリサーチ社(Etymotic research)はアメリカの音響関連メーカで、ER4シリーズは同社の中でもバランスドアマチュア式の最高峰クラスのイヤホンです。
30 dB以上の遮音性能と優れた周波数特性を有するのが特徴です。
ER4SRとER4XRは、どちらがいいか悩むところではありますが、どちらがいいかはイヤホンに求める音質によって分かれます。
どちらのイヤホンであっても素晴らしいのは、全体にわたる音域のバランスと、高音の聴こえ、そしてなんといっても音の分解能です。
耳にも慣れが必要ですが、わかるようになってくると楽器や声の音の震えを感じることができるようになります。普通のイヤホンであれば、隠れてしまいそうな音の粒など、他のイヤホンでは聴こえない音が聴こえてくることがあります。もしかしたら、他のイヤホンから買い換えた当初は、耳がなじんでいないので音の粒は聴こえないかもしれません。しかし、何度もER4シリーズで聴くうちに、今まで聴こえていなかった音が聴こえていることに気づくはずです。
さて、ER4SRとER4XRの違いについて説明します。
"ER4SR"は、従来のER4Sの正統な後継機であり、音源再生に忠実であることを目的として、平坦な周波数特性を実現しています。そして、旧機種のER4Sと比べると、さらに低周波音域が伸びています。ただ、周波数特性が平坦とはいっても、中高音域が少し持ち上がっています。これは頭部伝達関数を考慮しているからと考えられます。スピーカーなどのオーディオシステムで音楽を部屋の中で聴くと人間の頭の形状の影響で、中高域の音が少し持ち上がります。新しいER4シリーズは、この持ち上がりをイヤホンで補正しています。つまり、通常の音響空間で聴こえる音がイヤホンでも忠実に再現できるよう周波数特性を補正しているのです。低音を強調するなどの味付けはしない、"空間において真に忠実な音響再生を目指した"、それが"ER4SR"なのです。
さらに、電気特性もER4Sに比べてインピーダンスが低いのでポータブル機器でも使いやすく、つまりアンプなどを介さなくてもきちんと音圧を発生できるように改善されています。総じて、音の再現性に優れているため、モニタに適したイヤホンといえます。
次に本命の"ER4XR"ですが、これはER4SRとはリリースされたコンセプトが異なり、音楽を楽しんで聴くことに重きがおかれていると感じます。
というのもER4XRは、ER4SRとは中高音域の周波数特性は同じですが、低音域を5 dBほど持ち上げています。一般的な多くのイヤホンと同様に低音域を持ち上げて迫力を加えることで、音に少し味付けをしており、これにより音楽をより聴きやすくしています。それ以外の特性は、"ER4SR"と全く同じです。低域の持ち上げが5 dBというのは控えめな方ですが、私はちょうど良い持ち上げ量だと思います。これにより高域の粒感を生かしつつ、低域の振動感も加え、とても上品な音が作られています。お気に入りの音楽を聴くときには、いつも舞台の幕が開くような感動を味わっています。
"ER4SR"と"ER4XR"の使い分けをまとめますと、音源に忠実な音楽再生を好む場合はER4SRがふさわしいです。一方で、今まで他のイヤホンを使っていた方が、さらに良質な音を求めて音楽を楽しみたい時は、ER4XRがふさわしいといえます。
私は音楽家ではありませんし、音源に忠実な音を聴きたいと言うよりは、仕事に没頭したい、たまに気分転換で迫力のある良質な音楽を聴きたいと思っているので、より聴きやすい音質に仕上げられているER4XRを気に入っています。
若い人にもおすすめ
ここまで紹介したように、ER4シリーズ(ER4XR、ER4SR)のイヤホンは遮音性を確保したい、また外部の雑音の影響を受けずに良質な音楽を楽しみたいすべての人におすすめですが、若い人には特におすすめします。というのも、ER4シリーズは高周波域まで周波数特性が伸びているからです。
一般的に人の耳は、20 Hz〜20 kHzの周波数の音が聴こえると言われていますが、年齢と共に高周波数域が聴こえなくなります。中高年で約12 kHz以上、さらに高齢になると約8 kHz以上が聴こえにくくなるようです。
そのため、どんなに高周波音域へ伸びたイヤホンやヘッドホン、スピーカを使っても高齢になる程、高周波数音域は残念ながら聴こえなくなります。
しかし、10、20才代で、通常の聴力を持つ人であれば、このイヤホンが持つ高周波数域まできちんと音を聴くことができます。そのため、より音の粒度を感じることができ、音楽の感動を味わうことができると思います。
今思えば、むかし私はもっと音楽に感動することが多かったですが、それは高い周波数もきちんと聴くことができていたからだったかもしれません。意識することは難しいですが、音の粒度はとても大切な要素だと思います。
優れた遮音性能
エティモチックリサーチ社のイヤホンは全般的に遮音性能に優れています。ER4シリーズももちろん遮音性能に優れています。ER4SRとER4XRとでは遮音性能に差はありません。
耳栓のような構造のER4シリーズは、どの周波数帯においても遮音性能が優れているため、周波数域に関係なく外部音を遮断します。さらに、構造上、鼓膜の近くで音が鳴っていますので、音楽で外部雑音をさらにマスクします。
ER4シリーズで音楽を聴き始めると、人の声も含めて外部音はわからなくなります。
音によるマスク効果も含めて遮音性能が高すぎますので、歩きながらとか、自転車に乗りながらとかの使用は厳禁です。また、家やカフェで使うと周りの音は一切聞こえなくなりますので、誰かに声をかけられても、火事が起きてもわからなくなります。その点には十分に注意された方がいいですが、それほど外部からの遮音性能は素晴らしいです。
AirPods Proとの外部音に対する遮音性能の違い
さて、次にAppleのAirPods Proとも比べました。というのも、私にとって、外部音からの隔離ができれば、遮音イヤホンでもノイズキャンセルイヤホンでもどちらでもよかったからです。そこで、ノイズキャンセル機能が素晴らしいという評判に惹かれてAirPods Proを手にしてしまいました。
実際の使用において、ER4シリーズとAirPods Proとで外部音の遮断性能がどの程度異なるのかを聴き比べました。
電車の中、バスの中、飛行機の中で比べましたが、音楽の周波数成分にもよるのかもしれませんが、実使用環境においては、ER4シリーズの方が、AirPods Proより外部音を低減する遮音性能に関しては優れていると感じました。ただ、飛行機においてER4シリーズを使う場合は、地上から上空に上がった時、もしくはその逆の時に、気圧調整をするためいったんイヤホンつけ直す必要があります。そうしないと耳がちょっと痛くなることがあります。
あと、AirPods Proの名誉のために補足しますが、AirPods Proのノイズキャンセル機能が劣っているわけではありません。
もちろん、AirPods Proも実用レベルでは十分な外部音に対する低減性能を有しています。ただ、AirPods Proは製品の安全ポリシー上、遮音性能を調整しているように感じます。 例えば、人の声は聞こえるよう中域の周波数帯域はあえて減衰量を抑えているのではないかと思います。人の音は聞こえるという点ではAirPods Proの方が外部音も聞く必要がある時には使い勝手が良いともいえます。
また、AirPods Proはご存知の通りiPhoneとの接続性に優れています。さらに、ワイヤレスであるため、ケーブルがないことがどれほどストレスフリーに貢献するか実感します。周囲に対する安全性への配慮も含めると、AirPods Proは総じて普段使いのイヤホンとしては使い勝手の良い文句のないイヤホンです。
ちなみに、私の使用頻度はAirPods ProとER4XRとは同じくらいです。家で音楽をしっかり聴きたい時や仕事に集中したい時はER4XRを、外出時に手軽に音楽を聴きたい時はAirPods Proを使っています。この2つがあれば、音楽生活に不足は全くないです。大人買いができる方は、両方持つことをお勧めします。
ワイヤレス対応したER4XR-BT、Etymotion BT
AirPods Proはワイヤレスですが、ワイヤレスといえば、ER4シリーズのワイヤレス版も発売されています。ER4XR-BTです。これは、ER4XRをワイヤレス化したもので、周波数特性などの性能はER4XRと全く変わりません。
また、すでにER4XRやER4SRを持っている人がワイヤレス化するためにEtymotion BT ワイヤレスケーブルというものも用意されています(Etymotion BTのレビューをこちらに追加しました)。
ER4XRとの出会い
私がER4XRと出会うまで10年以上かかりました。最後に、ER4XRとの出会いについてお伝えします。
私はもともと遮音性能を重視してイヤホンを選んでいました。音質は悪くなければいいかなくらいでした。最初は遮音性能に優れているという同社の"mk5"というリーズナブルなイヤホンを買って、その遮音性能と音質に満足していました。それまでは、同価格帯のソニーやオーディオテクニカ、SHUREなどを使っていました。
しかし、"mk5"を使っているうちにエティモティックリサーチ社(Etymotic Reserch)の音に惚れてしまい、より上位の"HF3"へ買い替えることにし、長らく使っていました。でも、それもいずれ壊れてしまいました。その頃にはすでにエティモの音に魅せられていたいた私は、どうせならと思い、奮発して最上位機種である"ER4S"を手にすることにしました。ER4Sは期待以上の音楽を聴かせてくれました。ER4Sで音楽を聞いたときの感動はいまでも忘れません。音の質、遮音性能に満足するようになった私は、仕事にも集中でき、音楽も満足して聴くことができるようになり、もうこれ以上のイヤホンを求めようと思う気持ちがなくなり、ついに次なるイヤホンを求めるというストレスから解放されることができました(お金を出せばもっと良いイヤホンがあるかもしれませんが、遮音性と音質に満足した私はそれ以上は求めませんでした)。
安泰だった音楽生活だったのですが、ER4Sの後継機である"ER4SR"が発売されたことがわかり、いてもたってもいられなくなった私は、新しいER4シリーズを買うことにしました。
最初はもちろん迷わず"ER4SR"を手にしました。何といってもER4Sの正統な後継機なのですから当たり前です。評判通りER4Sに比べて低音まで伸びています。さらにインピーダンスも低くなったおかげで、iPhoneでもきちんとならせるようになり、満足度がさらに向上しました。これぞエティモだ!と。
すっかり"ER4SR"で満足していたのですが、なんと運悪く出張時に紛失してしまい、仕方なく、改めてイヤホンを買うことになりました。そこでふとが"ER4XR"が気になりました。もともとイヤホンを使うのは仕事に集中するためでしたので、音源の忠実な再生というより、低域を少し持ち上げて一般的なイヤホンの特性に近づけたという、"ER4XR"が気になって仕方なかったのです。なぜ、エティモティックリサーチがそのようなイヤホンを作るのだろうかと。Etymotic researchのWebページを見ると、音楽好きのためにと書いてあります。さらにGoogle翻訳を駆使して英語のメールでEtymotic research本社に"ER4XR"を作った理由を問い合わせました。返ってきた答えは「ER4XRは、もう少し低音域を聴きたいという方のために作りました。」と(原文はもちろん英語)。私がイヤホンに求めているのは、遮音性と良質な音質でしたので、自分が求めるイヤホンの初心に返り、意を決してついに”ER4XR”を手にしてみることにしました。悩みに悩んだ挙句の決断でした。
その甲斐あってか、”ER4XR”の音を聴いた時は、”ER4SR”とは違った感触でした。同じようだけど全く別物のイヤホンだと。そして、かつてER4Sを聴いたときの感動がよみがえってきたようでした。何度か聴いてわかったのは、高域の伸びや、音の粒感が"ER4SR"と同じでありながら、"ER4XR"は低域がさらにしっかりしており、音楽に迫力が増していることです。仕事をしたい時は、今まで通り仕事に没頭できますし、音楽を楽しみたい時はより音楽に没入できるようになりました。
もちろん、"ER4SR"でも音楽は満足できるものでしたが、これは多分好みの問題なのでしょうが、私はイヤホンには音源再生の忠実性よりは、むしろ迫力などの表現性を求めてしまいますので、"ER4XR"のほうが相性が良いと感じました。
そのようなわけで、やっとここに到達することができたのですが、かれこれ10年くらい、いやそれ以上かかっているのではないでしょうか。
いろいろなイヤホンを経て、今では"ER4XR"と”AirPods Pro”を使い分けて、音楽を楽しんでいます。これで、やっと私のイヤホン探しの旅が終わりました。
まとめ
エティモティックリサーチ社のER4XRを、ER4SRとの違い、AirPods Proにも触れて実使用経験をもとに紹介しました。
ER4XRとER4SRとは、どちらも甲乙付け難いイヤホンで、遮音性能、音質ともに素晴らしいイヤホンのシリーズです。
ER4XRの方が、他メーカのイヤホンのように低域の特性を持ち上げていますので、仕事から音楽鑑賞まで幅広い用途に違和感なく使うことができ、さらに迫力を得られると思います。
もし、他社のイヤホンからの乗り換えでER4シリーズの購入を検討するのであれば、あくまで好みですが、"ER4XR"もしくは”ER4XR-BT”をおすすします。ですが、”ER4SR”も素晴らしいイヤホンであり、どちらを買って後悔するものではないことを付け加えさせていただきます。
お気に入りのイヤホンを使って仕事や勉強に集中し、そして音楽を聴いてリラックスすることで、より充実した人生のお役に立てることを願っています。
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エティモティックリサーチ社のハイエンドイヤホン 低音重視型 ER4XR(サウンドハウス)
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ETYMOTIC RESEARCH ( エティモティックリサーチ ) / ER4XR-BT ワイヤレスイヤホン(サウンドハウス)
Etymotion BTのレビューを追加しました(2022-03-21)。
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エティモティックリサーチ社のハイエンドイヤホン リファレンス向け ER4SR(サウンドハウス)
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ETYMOTIC RESEARCH ( エティモティックリサーチ ) / Etymotion-BT ワイヤレスケーブル(サウンドハウス)
更新日 2022-09-19
初回掲載日 2020-06-30